大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成5年(ネ)5384号 判決

控訴人

甲野一郎

右訴訟代理人弁護士

外井浩志

被控訴人

株式会社ケイエム観光

右代表者代表取締役

波多野康二

右訴訟代理人弁護士

今中幸男

石井芳男

主文

一  原判決を取り消す。

二  控訴人が被控訴人に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

三  被控訴人は、控訴人に対し、金二三一〇万八五三五円及び昭和六三年一二月一日以降毎月二七日限り一か月金三三万八三〇〇円の割合による金員を支払え。

四  訴訟費用は、第一、第二審を通じ、被控訴人の負担とする。

五  この判決の第三項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人

控訴棄却

第二  事実の概要等

一  事案の概要

本件は、被控訴人の観光バス運転手である控訴人が、被控訴人のバスガイド乙川春子(以下「乙川」という。)と二度の情交関係を持ったとの理由で、昭和六一年八月一七日に被控訴人から解雇(以下「本件解雇」という。)されたところ、解雇事由が存在しないとして本件解雇の効力を争い、被控訴人に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、昭和六一年九月一日以降の月例賃金及び賞与(昭和六一年冬期、昭和六二年から平成三年まで夏期及び冬期)の支払を求め、併せて、解雇事由がないにもかかわらず解雇した不法行為に基づき慰謝料(七〇〇万円)の支払を求めた事案である。

原判決は、本訴に先行する仮処分事件において情交関係を肯定した乙川の証言等には信用性があり、それを覆した乙川の本訴における証言等は信用できず、解雇事由が存在するといえるから、本件解雇は有効であるとして、控訴人の請求をいずれも棄却したので、これに不服の控訴人が控訴した。

二  争いのない事実(1ないし4)及び証拠上明らかな事実(5、6)

1  被控訴人は、主に観光バス事業を営む株式会社であり、控訴人は、昭和五〇年六月二日から、被控訴人に雇用され、観光バスの運転手として、東京都品川区一丁目一番八号所在の被控訴人の営業所(以下「本件営業所」という。)に勤務してきたところ、被控訴人は、控訴人に対し、昭和六一年七月一八日、口頭で、同年八月一七日をもって控訴人を解雇する旨の解雇予告をし、同年八月一七日、本件解雇に及んだ。

2  被控訴人の解雇事由は、控訴人が被控訴人に当時バスガイドとして勤務していた乙川(同女は、昭和四一年一〇月生れで、昭和六〇年三月一三日高校を卒業直後被控訴人に雇用され、昭和六一年九月一〇日被控訴人を任意退職した。)と、昭和六〇年七月二二日及び同年一一月六日の二回にわたり、勤務時間後、品川区五反田所在のホテルで情交関係を結んだものであり、右行為が被控訴人の就業規則二七条一項一一号、七一条一一号所定の解雇事由である「賭博その他著しく風紀を乱す行為をしたとき」に該当する、というもの(以下「本件解雇事由」という。)である。

3  右事実が明るみに出た発端は、昭和六一年七月初めころ、控訴人の同僚運転手であるSないしKを通じて被控訴人に提出された乙川作成の文書(乙三七。以下「本件手紙」という。)に、本件解雇事由が記載されていたことによるが、これを受領した被控訴人は、同月一〇日ころから数回にわたり、人事担当者の村田勉運行課長(村田課長)及び稲葉忠運行係長(稲葉係長)をして事実関係の調査に当たらせたところ、乙川は、本件手紙に記載された事実を真実であるとしたうえ、次の内容の事実を申し述べた。

(1) 昭和六〇年七月二二日、乙川は、控訴人との同乗勤務終了後、控訴人から食事に誘われ、酒に酔って身体の自由を失ったため、無理やりに五反田のホテルに連れ込まれて、情交関係を迫られた。その後、口止め料として五〇〇〇円を渡され、タクシーで寮まで送られた。

(2) 同年一一月六日、勤務終了後、観光バスの水切りをしていた乙川に対し、控訴人は、「前回のことで謝りたい。あれ以来、いつか謝りたいと思っていたが、チャンスがなかった。」と述べて、乙川を食事に誘い、乙川がこれを断ると、「俺は何とでも言い逃れられる。お前との関係を社内にバラしてやる。そうすれば、お前はこの会社にいられなくなる。今晩五反田で待っているから必ず来い。」と脅迫し、控訴人とのデートに応じさせたうえ、前回と同じホテルに連れ込んで情交関係を迫り、その後、ホテルのつり銭と思われる二四〇〇円をタクシー代として手渡した。

右調査の際、乙川は、調査担当者に対し、右事実を同僚の沼山留美子(その後、結婚により荒賀姓に改姓し、更に苫米地姓に改姓した。以下「沼山」という。)に打ち明けた旨申述したので、稲葉係長は沼山を調査したところ、沼山は、乙川が右七月二二日の事実をその当日寮で打ち明けた旨述べたため、被控訴人は、乙川の供述には裏付けもあるとして、本件解雇に及んだものである。

4  他方、控訴人は、終始一貫、右の乙川が申述した事実は虚偽であって、本件解雇事由は存在せず、本件解雇は無効であると主張している。

5  控訴人は、本件解雇を不服として、昭和六一年九月一一日、東京地方裁判所に地位保全の仮処分申請をし(同庁昭和六一年(ヨ)第二三二三号事件。以下「本件仮処分事件」、「本件仮処分」ともいう。)、同裁判所は、口頭弁論を開いてこの審理をしたが、証人として出頭した乙川は、本件解雇事由は真実であると証言し、昭和六三年五月二七日、同裁判所は、本件解雇事由が一応認められ、控訴人の右申請は被保全権利につき疎明がないとしてこれを却下したため、控訴人は、控訴して争ったが、同年一〇月三一日、右控訴も棄却された(乙一、二、四)。

6  右事件の本案事件である本訴の原審において、乙川(当時結婚により丙田姓となっていた。)は、一転して、それまでの証言等を覆し、本件解雇事由である控訴人との情交関係は一切存在せず、乙川の事実上の保証人で、被控訴人の運転手S及び被控訴人の運転手Kから、控訴人との情交関係を手紙に書いて欲しいとの懇請により、これに応じて本件手紙を書き、Sに渡したこと、事が大きくなって、申述が虚偽であるとはいいにくくなったうえ、本件仮処分事件の係属後はSら及び稲葉係長らから、当初の申述を覆すことのないように念を押されたため、真実を述べることができないまま推移してしまった等と証言するに至った(原審の乙川証言)。

三  争点

1  本件解雇事由が存在するか。本件解雇は相当か。

2  本件解雇につき、被控訴人に不法行為責任が認められるか。

3  慰謝料相当額はいくらか。

四  争点に係る当事者の主張

1  争点1について

(被控訴人)

乙川の調査結果は右二の3のとおりであるところ、結婚前の女性が、情交関係を強要されたという自己の恥となる事実を、その名誉を犠牲にし、事態の推移により失職しかねない状況のもとで、これを捏造してまで白日のもとに晒し、控訴人を追求することに何らの利益はない。

本件手紙の記載及び本件仮処分事件における乙川の証言は、自ら経験しなければ、到底知り得ない具体的な事実を詳細にわたり再現したものであって、しかも、乙川は、右二の3のとおり、乙川の同僚の沼山に右事実を打ち明けており、沼山は、調査に際し、これを明らかにしている。

これらによれば、控訴人との情交関係の存在は真実であると認められる。

本訴に至り、乙川は、これまでの証言等を全面的に覆す証言をし、その作成した陳述書でも情交関係の事実を否定している。しかし、これは、前の証言等を最初に覆した当時、乙川は丙田と婚姻し、子供までもうけていたから、過去における控訴人との関係を否定せざるを得なかったものであるし、また、背景事情として、控訴人及び控訴人代理人の乙川の両親及び乙川に対する働きかけがあり、右の覆したころに乙川に対する訴え取下げもされていることからすると、控訴人が訴えの取下げを条件に、陳述書を書かせ、証言させたものと推測できるのであり、乙川の本訴の証言等は信用性がない。

控訴人は、乙川の仮処分時の証言の些細な矛盾や記憶違いを捉えてその信用性を争うが、乙川は、当時、高校を卒業し、上京したばかりの少女であり、その年齢、社会経験等に照らし、右矛盾、記憶の不存在等は問題とするに足りない。

一方、アリバイ立証の証拠と主張して、控訴人は、不自然なまでに詳細なテレビ番組の内容の記憶を提出し、待合せ場所までの所要時間につき自己の有利な条件を前提としたり、二回目の行為の日に同乗勤務でなかったことを根拠に、その日の情交関係はあり得ない等と主張するが、結局のところ、控訴人は、事案の秘匿性を奇貨として、言い逃れに終始しているに過ぎず、全く信用できない。

右によれば、本件解雇事由が存在することは明らかであり、また、解雇権濫用とはいえない。

(控訴人)

控訴人と乙川との情交関係の事実はなく、本件手紙及び本件仮処分事件における乙川の証言は虚偽である。もともと、事柄の性質上、乙川が情交関係の存在を一方的に主張し、控訴人がこれを否定している以上、この事実の有無は、被害者であると主張する乙川の証言等の信用性にかかっているところ、本件手紙の記載及び本件仮処分事件における乙川の証言には、以下のとおり多くの疑問があり、信用をおけるものではない。

(1) 本件手紙の提出の経緯

本件手紙は、二回目の行為があったとされる昭和六〇年一一月六日からでも八か月、一回目の行為があったとされる同年七月二二日からは約一年を経過した時点で提出されており、しかも、SないしKを通じて提出されたものである。この背景には、昭和六一年六月二一日の東山温泉での控訴人とS及びKとの喧嘩がある。控訴人は、同日、Kと口論となり、そこに加わったSが控訴人と乙川との情交関係があったとして控訴人にこれを認めるよう迫ったことから、双方が激しく対立した。このことがあって後、S及びKは、乙川に対し、控訴人と情交関係にあったことを書面にするよう働きかけ、乙川は、本件手紙に虚偽の事実を記載してSに交付したのである。

(2) 日付の特定

乙川は、本件仮処分時の証言で、情交関係があったとする日付を日誌により特定したとし、一回目の行為は初めて控訴人と同乗業務をした日、二回目の行為は、控訴人と同様の勤務である都内観光をした日であると述べていたが、乙川が一回目の同乗勤務であると主張する昭和六〇年七月二二日は、控訴人と乙川との二回目の同乗勤務の日であって(一回目の同乗勤務は、同年七月一二日であり、同月二二日以降の同乗勤務はない。)、行為の日の特定は不正確な事実が前提となっているうえ、二回目に情交関係を持った日とされる同年一一月六日は、控訴人と乙川とは別の業務に付いていて、乙川が午後の早い時間に帰庫したのに対し、控訴人は、その後も勤務があって、帰庫したのは午後六時半ころで、本件営業所の車庫で乙川に出会う可能性はない。

(3) ホテルの特定不能等

本件手紙の記載及び乙川の本件仮処分時の証言によると、控訴人と情交関係を持ったホテルは二回とも同一であるというのであるが、被控訴人が乙川を同道して調査を尽くしても、ホテルの名称はおろか、その場所の概略さえ特定されていない。ホテルにいく前に食事をしたとされる飲食店も、その名称も場所の概略も特定できなかった。いかに若年とはいえ、二度にわたり無理やり連れ込まれたとされるホテルを特定できないこと自体、極めて奇異というほかなく、ホテルの特徴その他についても、Sの入れ知恵により、あたかも具体的であるかのような供述をしているに過ぎないことからすると、情交関係の事実があったとは考えられない。

(4) 沼山の供述等について

乙川が控訴人との情交関係を打ち明けたとする沼山は、Sから同女の過去の情交関係等を夫に告げる旨脅されたうえ、乙川から控訴人との情交関係があったことを聞いたことにして欲しいと求められて、調査時にそのとおり供述し、また、当時の陳述書も、本件解雇後に被控訴人側の誘導により作成されたものであるところ、右陳述書によっても、その内容は、漠然と控訴人と乙川が食事に行ったこと、そのあとホテルに行ったことを打ち明けられたという程度であって、何らの具体的事実の記載がないから、信用性はない。なお、沼山は、本訴になってから、本件調査時の証言及び右陳述書の内容に虚偽の部分があることを認めている。

(5) 控訴人は、第一回目の行為の日とされる昭和六〇年七月二二日午後九時以降、「Uボート」というテレビ放映による映画番組を見ていたから、一回目の行為がなかったはことは明らかである。

一方、乙川は、本訴に至り、本当のことを言って心のわだかまりを除きたいとの動機から、偽証の制裁を覚悟のうえで、真実の証言をし、控訴人との情交関係はなかったこと、本件手紙の提出の経緯は(1)のとおりであり、本件手紙の記載及び本件仮処分時の証言がすべて虚偽であることを明らかにしており、更に、これを数通の陳述書で具体的に述べている。

したがって、本件解雇事由は不存在であって本件解雇は無効である。

また、乗務員とバスガイドとの情交関係の事例につき、通常の場合依願退職で済まされており、しかもこれらの殆どは、本件のような時間外の事例ではなく、より情状の悪い勤務先での事例であることに照らせば、控訴人を解雇とした処分は重きに過ぎ、解雇権の濫用に当たる。

2  争点2について

(被控訴人)

被控訴人は、本件手紙を受け取った後、直ちに数回にわたり、控訴人、乙川及び第三者である沼山から十分に事情を聴取し、乙川と控訴人を対質させるなどして控訴人に反論、弁明の機会を与えているものであって、その調査に落ち度はない。仮に、真実、情交関係の事実がないとしても、調査時において右のような事情にあったのであるから、被控訴人が本件解雇事由があると判断したことに過失はない。

(控訴人)

被控訴人の担当者は、本件手紙が提出された直後に控訴人を呼び出して事情聴取をしたが、本件手紙を控訴人に示さず、一方的に本件手紙の記載を信用し、控訴人の主張に耳を貸さなかった。同月一六日、乙川と控訴人との同席しての調査の際、乙川は、SとKに頼まれて、二人の首がかかっているから文書を書いてくれと強要され、三回位断ったが、名前は公にしない、どうしても書いてくれと言われて本件手紙を書いた旨述べていたので、同月一七日、控訴人は、村田課長に対し、本件手紙がSによるデッチ上げ文書であり、これに関わる者の厳罰を望む旨の文書(甲一六)を提出し、更に、同月三〇日、被控訴人の青木信二管理部長に対し、文書(甲一七)で苦情申立てを行い、慎重な事実の調査と、本件手紙の提出に関わったSらの調査を求めたにもかかわらず、被控訴人は、控訴人の右申立てを無視して事実の調査を進めることなく、また、弁明のための時間的余裕も与えず、同月一八日、短時日のうちに解雇予告をして本件解雇に及んだ。

被控訴人がS及びKを十分調べていれば、本件手紙の提出経緯が明らかとなり、乙川との情交関係の事実が捏造に係るものであることが明らかとなった筈であるから、本件解雇につき、被控訴人には過失がある。

3  争点3について

(控訴人)

控訴人は、存在しない事由を根拠にして被控訴人から解雇され、今日まで八年以上にわたり無実の罪を着せられ、かつ、唯一の生活の糧を奪われて、生活費の捻出のため、借金をするなど、言語に尽くせない精神的苦痛を味わっている。右を慰謝するには、七〇〇万円をもって相当とする。

(被控訴人)

右2のとおりである以上、本件解雇は不法行為を構成しないから、被控訴人は慰謝料の支払義務を負わない。

第三  争点に対する判断

一  争点1について

第二の二の5、6のとおり、乙川は本件仮処分事件当時は控訴人との情交関係を肯定する証言をしていたが(乙四)、本訴ではこれを覆し、控訴人との間に、情交関係はなかった旨証言しているので、いずれの証言に信用性があるかを検討する。

1  甲第三一、第三四ないし第三八、第四〇、第四一号証、第四二号証の一ないし三、第四八号証、乙四四号証の一、二、証人乙川の原審及び当審における証言によれば、以下の事実を認めることができ、これに反する原審相被告Sの供述の一部は採用できない。

乙川は、被控訴人を退社をした後、Sの紹介で都内に就職してS宅近くにアパートを借りて住みたいとの希望を持っていたが、右退社の経緯につき両親から事情を質され、乙川の説明や様子等を通じてSに関係する事件に巻き込まれて娘が利用されたことを疑った両親から、Sとの関係を絶つよう厳しく注意を受けた。そして、乙川は、父とともにS宅に預けてあった荷物を取りに行ったが、その翌日、Sにキャシュカードを返して欲しいと依頼した手紙(乙四四の1、2)の中に、K及びSに依頼されて告白文(本件手紙)を書いたことに後悔していること、両親には事情を話して誤解を解いたこと、Sとモーテルに行ったことは内緒にしてあること、Sを裏切ることになるかも知れないことなどを記述していた。乙川は、その後、親元に帰省して東京都内のデパートでアルバイトをしていたが、本件仮処分事件の昭和六一年一二月五日及び昭和六二年二月二七日の口頭弁論期日において、証人として証言し(これに先立ち、被控訴人の担当者、弁護士やSとの打ち合わせが行われた。)、その後、同年四、五月ころから君津市内のデパートでパートとして働き、本件仮処分事件が控訴人の敗訴で終了した後は、本件の紛争は終了したものと考えていた。この間の昭和六三年七月一四日、控訴人は、乙川に電話して、本件手紙の内容につき、直接問い質すことを試みたが、乙川は、「Sさんの方に言っていただけますか。そういうことは。」と述べて直接解答することを避ける態度であった。同年一二月、乙川は、交際していた丙田太郎を頼って家出し、その捜索の手掛かりを得ようと乙川の荷物を整理していた母親は、S宛の乙川の手紙を発見し、そこに「いいようにしてあげると言っていたので手紙を書いたのに、利用するだけ利用して、大人なんて嘘つきだ。馬鹿」との趣旨の記載があったため、親なりに本件の概要を理解するに至った。乙川は、丙田と関東地方を車で俳徊していたが、平成元年七月末ころ千葉県佐倉市内パチンコ店ウエスタンで丙田とともに夫婦で住み込み稼動していたところ、知人の葬儀に出席したことから、両親に居場所を知られ、これより前に両親に対し、真実を述べてくれるよう求めていた控訴人及び控訴人訴訟代理人外井浩志(以下「控訴人代理人」という。)は、同年九月七日、ウエスタンで乙川と会い、ウエスタンの支配人である潮見哲男夫婦の立会いのもとで、乙川から事情を聞いた。乙川は、当初は本件仮処分事件での証言を維持する発言をしていたが、ついに、被控訴人の働きかけにより嘘の証言をしてしまったが、本当は控訴人との肉体関係はなかったとする簡単な陳述書(甲三四)を書くに至った。

更に、同月二四日、君津市内の乙川の両親宅において、乙川の両親、丙田太郎、潮見夫妻の立ち会いのもとで控訴人及び控訴人代理人から事情を聞かれたが、これより前、丙田との相談で、同月七日の陳述書の内容を再び覆すことに決めていたものの、潮見の妻から、二回も犯されたホテルを特定できないということはあり得ない旨の指摘を受けて、これ以上真実を隠し通すことは不可能であると考え、結局、控訴人との関係はなかったことを認め、手紙を書いた経緯につき、Sから電話で、東山温泉で控訴人と乙川との情交関係があったか否かで喧嘩となり、乙川がその事実を記述し、被控訴人がそれを真実と認めれば、控訴人は首になるが、乙川が記述しないと、S及びKが辞めることになると告げられたうえ、控訴人から犯されたことにして手紙を書くように求められたこと、乙川はSに、被控訴人への就職に世話になったほか、時折泊りに行ってもいるような関係にあったため、断わりきれずに本件手紙を書いたこと、もっとも、本件手紙の内容については自分で考えたことであることなどを述べたため、それをまとめた陳述書の案を控訴人代理人が作成し、それに基づき乙川が陳述書(甲三五)を自筆した。

乙川は、平成二年一月二六日及び三月二八日の原審口頭弁論期日に、証人として証言したが、その際、仮処分事件における証言を否定し、それを覆すに至った動機として、本当のことをいって心のわだかまりをなくし、落ちつきたい旨を述べたほか、原審での証言後に作成された平成三年六月二八日付け陳述書(甲四一)には、前の証言を覆すことは自身の罪を認めることになるため、大変勇気の要ることであるが、控訴人の苦境を考え、周囲の者も真実を述べることを支援してくれたので本当のことを証言できて胸をなで下ろしていることが記載され、また、同年八月二三日に投函された控訴人宛の手紙(甲四二の1ないし3)にも、安易な行動から控訴人に迷惑をかけたことを詫びるとともに、一歳になった掛けがえのない娘のために自分の信用を取り戻せることを期待している旨の記載がある。

2  右によれば、乙川が本件仮処分時の証言を覆すに至ったのは、本件仮処分事件の終了後に、控訴人及び控訴人代理人並びに周囲の者から、真実を述べるよう、強く説得を受けたことが直接の契機となっていることが明らかであり、また、乙川が右の二番目の陳述書を作成した翌日の平成元年九月二五日、乙川に対する損害賠償請求訴訟が取り下げられている事実も認められるが、陳述書の記載内容に具体性もあること、原審における証言後の乙川の心境の吐露等に信用するに足りるものがあることなどからすれば、本訴における乙川の証言(原審及び当審)及びそれらにそう乙川作成の陳述書(甲三四、三五、三八、四〇、四一、四八)の記載は、信用することができるものというべきである。

なるほど、高校卒業直後の女子が、自己の勤務先である被控訴人に提出されることを了承したうえ、ありもしない控訴人との情交関係の事実を捏造し自己の恥を勤務先に晒すことに如何なる利益があるかについては、社会常識から大いに疑問が残るところであるが、前掲証拠のほか、甲第一四号証、原審における相被告S、同K、控訴人の各本人尋問の結果によれば、本件手紙が提出される直前の昭和六一年六月二一日、東山温泉で、控訴人とS及びKとが喧嘩となり、その中で、控訴人と乙川とが情交関係にあることを指摘してこれを認めさせようとしたS及びKと、これを否定する控訴人とが激しく口論したこと、その席で、Sは、控訴人に対し、控訴人がしらを切っているとし、もし、乙川が情交関係の事実を肯定し、被控訴人がこれを真実と認めれば、控訴人が首になるが、もし、乙川がこれを肯定しなければ、S及びKが被控訴人を辞める旨述べ、これに対し、控訴人もSらの発言は不当であるから、同人らを訴えて首にしてやると述べたこと、Sはこのことを乙川に電話で告げたうえ、手紙を書くように強く要求したこと、乙川は、三回程断ったが、名前を出さないとの約束で不承不承これに応じたこと、当時、乙川はSに好意を寄せ、Sと格別に親密な関係にあり、それまでも被控訴人への就職、平素の行き来等で世話になっていたこともあって、これを断りきれなかったことが認められ、これとSの供述に窺われる控訴人への極めて強い憎しみの情を考え合わせると、本件は、東山温泉での口論の行きがかり上、口論時における発言を実行するため、Sが自己の意のままになる乙川を利用し、乙川と控訴人との情交関係の事実を捏造して控訴人を解雇に追い込むために乙川に手紙を書かせたうえ、本件仮処分時には、これにそうような証言をし、その証言を覆さないよう働きかけたものと推認することができ、右の推認によって、初めて前記の疑問は解消できるものと考える。

3  更に、本件手紙(乙三七)及び乙川の本件仮処分事件当時の証言(乙四)には、これを信用するとすれば、(1)控訴人との初めての同乗勤務の日に既に一回目の情交関係があったことになり、このようなことは常識に反すること、(2)甲第一三号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、控訴人と乙川とは昭和六一年七月一二日と同月二二日の二度の同乗勤務をしているに過ぎないところ、右証言によると、最初の同乗勤務日に一回目の情交関係があったと述べながら、その日は同月二二日としていてそこに矛盾があり、また、二回目の情交関係があったとされている日は、右証言によると、乙川が観光バスの水切りをしているときに控訴人が帰庫して、乙川と控訴人は車庫で会ったとしているが、甲第一二号証によると、控訴人は午後六時半ころに帰庫していることが認められるのに対し、甲第五〇号証の一ないし五及び弁論の全趣旨によると、乙川は、遅くとも午後四時半には帰庫していることが認められ、乙川が観光バスの水切りをしていたとしても、それほど時間はかからず、乙川は控訴人の帰庫時より相当以前に水切りを済ませて車庫を離れているはずであって、乙川と控訴人が車庫で出会う可能性は少ないこと、(3)二回にわたり、控訴人から同一のホテルで情交関係を強要されたとする乙川が、二度の調査によっても、そのホテルを特定することも、位置の概略を示すこともできなかったほか、ホテルに行く前に立ち寄ったとする飲食店の名前も位置も示せなかったこと、(4)関係を強要されたといいながら、控訴人から「口止め料」を受領しており、右証言によると、口止め料との発言がタクシー運転手の面前でされているとしていることも不自然であること、(5)控訴人からの情交関係を強要され、悔しい思いをしていたとする乙川が、一回目の行為直後、控訴人を糾弾していないだけでなく、二回目にも控訴人の誘いに安易に応じているのも奇異であり、しかもその直後にも、控訴人を糾弾する手立てを取っていないこと、(6)手紙に記載された情交関係の後の控訴人の言動や、男物の靴を預かるとするホテルの特定は、創作によっても作り上げることのできるような内容であり、他方、二回の情交関係の具体的状況につき、右証言は、曖昧なところが多く、真実性を裏付けるような具体性のあるものではないともみられること、(6)乙川からの控訴人との関係を打ち明けられた時期と事情につき、Sの供述は暖昧で採用できず、右証言も全体として曖昧であること、(7)何よりも、本件手紙が杉田を通じて被控訴人に提出され、その時期も、情交関係があったとされる日から少なくとも八か月以上を経ていることなど、多くの疑問点があり、本件手紙及び右証言(乙川の本件仮処分時における証言)をそのまま採用することはできない。

4  また、乙川の同僚の沼山は、本件解雇後の昭和六一年一〇月二日、稲葉係長の懇請に応じ、乙川から控訴人との情交関係の事実を打ち明けられたとする陳述書(乙三九)を提出しているが、その内容は、食事が終わった後お酒が入っていたため、控訴人に付いてホテルに行ったという程度であって、控訴人に情交関係を強要されたというものではないほか、漠然とした内容であり、本件手紙と右陳述書によって、本件解雇事由の存在を断定するには躊躇を感ぜざるを得ない。のみならず、甲第五一、第五二号証によれば、沼山(現在苫米地姓)は、同女の右陳述書によって苦境に陥っているから真実を述べて欲しいとの控訴人の手紙に応えて、当審に至り陳述書(甲五二)を提出し、その中に、昭和六一年六、七月ころ、乙川から、Sに協力するために、控訴人から関係を強要されたことにしておいて欲しいと頼まれ、また、そのころ、Sからも、過去の沼山の男性関係を口外すると暗に脅され、結局、同年一〇月に稲葉係長の聴取に応じて右陳述書を作成したのであるが、真実は、乙川と控訴人との間に情交関係があったか否かは知らないのであり、真実を述べるに至ったのは、控訴人が沼山の陳述書により苦境に陥っていることを知ったためであるなどといったことが記載されているのであって、右陳述書の内容を現在では否定し、修正しているものであることが認められる。

証人稲葉忠の証言によれば、沼山は、稲葉係長の調査に対し、右陳述書と同じ趣旨の供述をしたことが明らかであるが、同証言によっても、沼山が、乙川と控訴人との間の情交関係につき、その具体的状況についてまで稲葉係長に申述した事実はこれを認めることができず、右陳述書の内容が右のとおり否定し、修正されている以上、右陳述書をもって控訴人と乙川との情交関係を客観的に裏付けるものとはいい難いというほかはない。

被控訴人は、乙川は原審での証言時は丙田と婚姻していたから、控訴人との関係を否定すべき理由があったと主張するが、甲第四八号証によれば、丙田は、乙川の過去の関係につき、執着しない性格であったほか、当初、仮処分時の証言を維持するよう乙川に勧めたが、その後、乙川が供述を変えるようになったとき、いずれでも良いから早く決着するように述べていたことからすれば、原審証言当時の乙川の身分関係が証言内容に影響しているものとは認めがたいし、当審においては、乙川は丙田と離婚していたから、当審における証言では、同人との関係を考慮する必要がなかったことが認められ、被控訴人の主張は採用できない。

5 以上のほか、控訴人が調査の当初から一貫して乙川との情交関係の事実を否定していることを合わせ考慮すると、本件手紙及び本件仮処分事件における乙川の証言は、虚偽であると解するのが相当であり、他方、本訴における乙川の証言(原審及び当審)及びそれにそう乙川作成の陳述書には、その内容の変遷の経緯を考慮に入れても、信用性があるというべきである。

そうすると、本件解雇の事由とされた控訴人と乙川との情交関係の事実は、これを認定するに足りず、かえって、右事実は存在しなかったものと認められる(なお、弁論の全趣旨によれば、本件解雇は、普通解雇であるとはいえ、実質的には懲戒解雇であって、被控訴人は、本件解雇事由が不存在であれば、本件解雇が不法行為になるかどうかはともかく、それが無効とされてもやむを得ないと考えていたものと認められる。)。

したがって、本件解雇は、その解雇事由が存在しないから、その余の点につき判断するまでもなく無効である。

二  争点2について

甲第一二、第一四、第一六、第一七、第一八号証、乙第四〇ないし四二号証、証人稲葉忠の証言及び控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、昭和六一年七月一〇日、本件手紙が提出された直後、稲葉係長が乙川から、手紙の記載内容、情交関係後日時を経過して本件手紙を提出した理由、Sに内容を話した理由等につき事情を聞き、乙川の申告態度が訥々としていたことから、情交関係の存在はほぼ間違いないとの心証を抱いたこと(ただし、稲葉係長が同日のメモに基づいて後日作成した同日の聴取メモである乙第四〇号証には、稲葉係長がこの問題は証拠を立証することは大変難しいとの発言をした旨の記載がある。)、同月一二日、稲葉係長が控訴人から事情を聴取したが、その際、控訴人としては、SとKとの東山温泉での喧嘩のことで注意を受けるものと思っていたのに、予期に反し、乙川から、控訴人との情交関係があったとの記述のある手紙(本件手紙)が提出され、この手紙だけでも控訴人は首になると告げられたので、控訴人は、S及びKから乙川と控訴人との情交関係を指摘されて東山温泉で喧嘩となったことはあるものの、乙川との情交関係の事実は全くないことを述べ、これに対し、稲葉係長は、デッチ上げというのであれば、乙川を訴えて公の場で決着をつけなければ解決できない、控訴人が乙川を訴えることを考えていないのには疑問を持つ旨述べたこと、同月一六日、稲葉係長は、乙川と、情交関係のあったホテルを探しに行った後、乙川同席のもとに、労働組合の入江好信支部長に本件についてのこれまでの経緯を説明したこと、同日稲葉係長は、高畑指導乗務員同席のもとに、乙川と控訴人とを対質させて事情を聴取したが、その際、乙川は本件手紙の内容と同様の申述をし、これを否定して証拠の提出を求める控訴人に対し、卑怯だとか男らしく認めよとか述べたほか、沼山に事実を告げた旨述べたので、稲葉係長は同女から確認をとる旨述べたこと、右席上、乙川は、本件手紙の提出経緯につき、SとKの首がかかっているとしてこの手紙を書くことを強要されたのであり、この問題が大きくなることは望んでいないなどと述べたこと、翌一七日、控訴人は、村田課長宛に、前日の乙川の発言を引用したうえ、本件はデッチ上げであると断じて、それに関わるものに対し、強い憤りを感じ、厳罰を望む旨の書面(甲一六)を提出したが、翌日に本件解雇の予告が控訴人に通知されたこと、同月二〇日、稲葉係長は、乙川から、重ねて事情聴取をしたが、乙川は、同月一〇日の調査の際と同内容を述べたこと、同月三〇日、控訴人は、被控訴人の中央苦情処理委員会青木管理部長宛に、同月一六日の乙川の発言内容を引用し、身に覚えがなく、デッチ上げであるから、今一度文書の内容と事実の確認をして被控訴人の処分の正当性を審議するよう求める文書(甲一七)を提出したこと、右書面の提出にもかかわらず、被控訴人としては、右に述べた以上の調査はせず、結局、本件解雇前には、S及びKから全く事情聴取をしなかったこと、本件解雇後一月以上経過してから、本件営業所において、本件手紙が被控訴人の担当者に提出される前に、S、K及び金沢(被控訴人の運転手)がその内容を見ているとの噂が流れたため、稲葉係長は、同人らに対し、その事実の有無につき調査したが、調査は本件手紙を事前に見たか否かに限られたこと、同年九月一一日、控訴人が村田課長を尋ねて、本件解雇に対する不満を述べた際、村田課長は、本件手紙の提出に不自然な点があることは認めつつも、控訴人に対し、このような事件はデッチ上げようと思えばデッチ上げられる性質のものであり、控訴人が乙川を相手取って白黒つけなければ、本件解雇を撤回できないと告げたこと、以上の各事実を認めることができる。

右によれば、控訴人は、強く事実無根を訴え、一貫して本件手紙はデッチ上げであり、証拠を示して欲しいと繰り返し被控訴人の担当者(村田課長、稲葉係長等)に申述しており、本件解雇の予告がされた後も、更に事実の調査を遂げて欲しいと訴えていたが、被控訴人の担当者は、本件手紙提出の経緯の不自然さを知っており、また、S及びKが本件に関与していることを知っていたか、容易に知り得たにもかかわらず、控訴人の繰り返しの訴えを無視し、本件手紙と乙川の陳述のみを一方的に採用したうえ、短時日のうちに本件解雇を決定したことが認められる。

しかし、乙川の調査時における陳述(本件仮処分時の証言と概ね同一内容と考えられる。)は、本件手紙とともに、右一に述べたところからすれば、虚偽というべきであり、弁論の全趣旨によれば、S及びKの事情聴取、同人らと控訴人との対質、沼山の調査及び控訴人との対質等の機会を与えるなど、控訴人と乙川との情交関係の事実の認定につき、更に慎重な態度で臨んだとすれば、東山温泉での控訴人とS及びKらの口論が事件の発端であり、本件手紙が事実の捏造の結果であることを知り得たか、少なくとも、情交関係の存在を認定することが難しいとの判断に至ったものと考えられるのであって、本件解雇事由が存在するとの被控訴人の担当者の認定は、いかにも杜撰であって、相当ではなく、本件解雇を行うにつき、右担当者に過失があったものということができる。

被控訴人は、被害者であるとする乙川作成の本件手紙と事情聴取の際の乙川の陳述のほか、沼山が一回目の情交関係につき当時乙川から聞いた事実を肯定していた以上、仮に控訴人と乙川との情交関係の事実が認められないとしても、被控訴人は無過失であると主張するが、右のとおり、被控訴人の担当者は杜撰な調査により解雇事由を認定したが、仮にもう少し慎重に調査すれば、解雇事由が容易には肯定できないことを知り得たものといえるから、被控訴人の右主張は理由がない。

以上によれば、本件解雇は、被控訴人の担当者である村田運行課長及び稲葉運行係長らの過失に基づき、控訴人から、本来継続して有すべき被控訴人との雇用契約上の地位を失わせたものであって、不法行為を構成するものというべきである。

三  争点3について

甲第二六号証、控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は八年以上の長きにわたり、本件解雇の無効を訴えて被控訴人と抗争することを余儀なくされ、この間、バスガイドとの情交関係という不名誉な事由により解雇された者として、就職もままならず、右のような社会的評価に甘んずるほかなかったこと、本件解雇により、唯一の生活の糧を失い、家族の養育、住宅ローンの返済のため、知人から借金をして凌いで来ざるを得なかったことが認められ、右二に認定の本件解雇に至る経緯その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、控訴人は右不法行為により、精神的苦痛を受けたことは明らかであるところ、これを慰謝するためには七〇〇万円をもって相当と認める。

四  雇用契約上の権利を有する地位及び賃金等

右一ないし三によれば、本件解雇は無効であり、控訴人は、被控訴人との雇用契約上の権利を有する地位にあることが明らかである。そして、控訴人が本訴において請求している月例賃金及び夏季、冬期ボーナスは、以下のとおりであり、右額については当事者間に争いがないから、控訴人の賃金及び賞与の請求は全部理由がある。

1  月例賃金(月例賃金額三三万八三〇〇円)

(1) 九一三万四一〇〇円 ただし、昭和六一年九月一日から昭和六三年一一月三〇日までの二七か月分の合計額

(2) 昭和六三年一二月一日から毎月二七日限り一か月当たり三三万八三〇〇円の割合による賃金(ただし、給料の支給日が毎月二七日であることは弁論の全趣旨によりこれを認める。)

2  賞与 六九七万四四三五円ただし、昭和六一年冬期から平成三年冬期までの以下の(1)ないし(11)の賞与の合計額

(1) 五七万二四三七円(昭和六一年冬期分)

(2) 五四万〇七二五円(昭和六二年夏期分)

(3) 六一万七三五四円(同年冬期分)

(4) 五五万九九八八円(昭和六三年夏期分)

(5) 六四万四七二四円(同年冬期分)

(6) 五九万八二二八円(平成元年夏期分)

(7) 六七万八二四九円(同年冬期分)

(8) 少なくとも六五万〇九一九円(平成二年夏期分)

(9) 六八万一三四一円(同年冬期分)

(10) 六九万一九八〇円(平成三年夏期分)

(11) 七三万八四九〇円(同年冬期分)

第四  結論

よって、これと異なる原判決は失当であるからこれを取り消したうえ、控訴人の被控訴人に対する請求をいずれも認容し、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、八九条を、仮執行宣言につき、同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官鈴木康之 裁判官大前和俊 裁判官三代川俊一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例